2011年02月15日

「潮音」2011年新春20首詠入選歌−その4−

   
 
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    #古都逍遙 −その4−


水n(すいびやう)を指(および)にさげて立ちませる悲母観音をみあげをり 孤り

塀越しに見ゆる八角円堂の夢殿の空に宝珠浮きゐる

黄金なす穂の絨毯を延べし先に三重
(みへ)なる塔の安けくも立つ

秋桜風になびきて斑鳩の小さきみ寺の九輪霞めり

街道を最終バスがやつてくる子規の柿の実食ふ暇(いとま)なし
  
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  実をいふと一首目の悲母観音は実写ではない。ボクのイメージのなかにあるものだ。
  あへていへば光明皇后を写したといはれる法華寺の十一面観音だ。
  これは秘仏なんで公開の時期しか拝することはできない。この春には行つてみたい。
  この連作中には出て来ない法華寺だが、光明皇后を詠んだ秋艸道人の歌碑がここにある。

 ・ふぢはら の おほき きさき を うつしみ に あひ みる ごとく あかき くちびる  會津八一

 二首目は頭書の写真にある通り、三〜四首は斑鳩の法起寺のことである。
 法起寺の庭にはコスモスが揺れていて野趣のある景だった。 
 京から大和への旅は心の癒される旅であった。


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2011年02月12日

「潮音」2011年新春20首詠入選歌−その3−

 
    gigei.jpg        #古都逍遙 −その3−  zenkei.jpg


山と見しはいにしへびとの眠る墳墓(はか)その辺(へ)を廻り歩み進めぬ

此処に来て時の流れはゆるくなる白き木槿の秋篠の里      

伎藝天に願ふこと多しその一つわが歌友の真幸くもあれ     

ゆたかなる頬に笑みをば見せたまひ肩なだらかに人びとを魅す

神将に踏みつけられし邪鬼の顔われに似たるがいとほしかりき


   
秋篠寺の伎藝天は本当に魅力的だ。
   そのふくよかな身体の線には魅せられてしまふ。
   お守りを3つ買った。芸事を目指す人のお守りなので短歌の友達へのプレゼントにした。

 
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2011年02月07日

「潮音」2011年新春20首詠入選歌−その2−

  

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  #古都逍遙 −その2−

ゆうるりと雨の奈良坂登りきていにしへびとの歌をおもひき

春日野をもとほる秋艸道人の後ろ姿が見ゆる夕ぐれ

なき妻のおもかげを見るみほとけの頬吹く風もかそかなる朝

はつかにも風あるごとし香煙のゆれて昇るを見つつをろがむ

雨に追はれ遅き昼餉をとりし店の女あるじは天平の顔


奈良坂と言ふのは奈良から北へ木津の方へ越えて行く坂である。
その辺一帯の丘を平城山(ならやま)といふ。
上古より平城京より近江へ、さらに先へと向ふ重要な街道であったらしい。

いにしへ人といへば、やはりこの近くに御陵のある磐ノ姫の歌が思い起こされるが、
ボクにとっては「平城山」といへば、
萬葉集よりも次の短歌に平井康三郎が曲をつけた歌曲をまづ思い出す。

 ・人恋ふはかなしきものと平城山にもとほりきつつ堪へがたかりき  
 ・古(いにし)へも夫(つま)に恋ひつつ越へしとふ平城山の路に涙おとしぬ  北見志保子
 

お若い頃の平井保喜(康三郎)先生には、一度お目にかかったことがあるし、
先生のサイン入りの「平城山」の楽譜を持っていたこともある。(残念だが今はない)

平井先生はボクの故郷の高知県伊野(現いの)町の方で、
この歌曲の唱れるのを初めて聴いたのは60年以上も前のことだ。
北見志保子も高知県宿毛の方、その恋のエピソードは長くなるので
今は省略しておく。

それやこれやが少年の頃のボクの心に染みついて、
奈良恋ひの原点になっているのだらう。

2首目にある秋艸道人といふのは、會津八一のこと。
この歌人の平仮名ばかりで奈良を詠まれた「南京新唱」は素晴らしい。
ボクの連作も八一の歌が下敷きになってゐる。

  

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2011年02月06日

結社誌「潮音」2011年新春20首詠入選歌−その1−

「潮音」の新春20首詠に入選した。

一昨年、昨年と準入選だったので3度目の正直か…
素直に嬉しい。 5首づつ4回に分けて載せることにする。


   
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   #古都逍遙 −京より大和へ− その1 

白萩のこぼるる京の古寺にわが恋ひしたふ菩薩在します

清やかな面
(おも)もて思惟(しい)に入りたまふ弥勒菩薩に挨拶をせむ

細き指の頬に触れざるその間
(あはひ) 宇宙の果てを思はせる距離

われに遠き思惟の形よ弥勒さま半跏の趺坐を解かせたまへや

みほとけの慈悲を諸手に受けて眠(ね)るホテルの夜を短く思ひぬ

  
             
Maitreya_Koryuji[1].jpg    
この旅の連作は京都からはじまった。
京都の友人Pさんに太秦まで連れて行って頂いて、廣隆寺を訪れるところからだ。

此処を訪れるのは何年ぶりになるかなぁ…
初恋の人に逢ふやうなときめきを持って掌を合はせる。

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2010年12月15日

「潮音」2010年12月掲載分


   


  # 太田絢子師一周忌
 
亀ヶ谷(かめがやつ)坂の羊歯黄葉が美しい  kamegayatu.jpg 


 亀ヶ谷の狭き間
(あはひ)の上にみる空澄みわたり忌日近づく

 山荘に向かひて登るわが肩に秋茜ひとつ留らむとする 

 問ひ給ふ「あなたは塩尻の人ですか?」訪
(おとな)ひし日のお言葉を憶ふ

 信濃には詩
(うた)の心の故郷(さと)ありと答(いら)へむとして口ごもりたり

 師の前に気障な言葉を言ふまじと思ひなほして顔赤らめぬ


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「潮音」2010年11月掲載分(その2)



    # 白き光

              
rose.jpg     今年の夏は格別に暑かつたなあ。
       
                     食欲もなくなるし、息するのも面倒になつて困つた。
                     寒いほうがまだ好いと思つてゐた。
                     でもさ、今頃になつて夏の歌を掲載してるやうではダメだな。


  食卓の真中にひとつ白き薔薇位置占めたれば食欲は失す
 
  残暑とふ呼び名に炎帝怒りきて空の真中にどつかりと坐す
 
  指折りて外出
(そとで)せし日を数ふる夜疲れるよほんと生活(たつき)といふは
 
  新しき恋などをまたして見むか破調のわれのひと日はぢまる
 
  生くることも死ぬこともまた面倒だ白き光は庭に満つれど


  
掲載されなかった次の二首は暑さでハチャメチャ気味だつた。


  怒れると言ふにもあらず炎帝はわが身の熱に動きとれぬか
  
  秋立つとの言葉ばかりのニッポンの熱帯夜です 裸でビヰル



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2010年12月14日

「潮音」2010年11月掲載分(その1)

 
 
    
       # 真つ赤な薔薇を・・・


 
              
 
            burgaria.jpg     カミサンは特定の宗旨は持つてなかった。   
         
      それでも、なにか信仰する気持ちがあるらしくて、奈良や京都の古寺は好きだったし、
      身延山にも善光寺にも、山形の山寺にも行けば手を合せた。
      サンチャゴ・デ・コンポステラやウイーンやパリのカテドラルも行けば目を閉じて何か拝んでゐた。
      涙を流してゐたこともあつた。 その幅の広い信仰心がどこから来るのかボクには分からない。
            
      葬儀はいらない、仏壇もいらない、明るい花だけ飾つて、
      と言ひ残して誕生日が過ぎた翌朝の明け方に永眠した。
      でも、ボクは春秋のお彼岸とお盆には花を飾ってセレモニーをする。 
      カミサンの好きだった赤い薔薇やカーネーションを飾つて…


   
「おとうさん頑張りすぎたらあかんよう」声が聞こえる また盆が來る
  
  ゴミ出しの刻近づけば起き出だす習慣
(ならひ)身につく偉いぞ俺は
  
  妻も俺も佛の花は嫌ひです真つ赤な薔薇を活けて安らぐ
  
  澄みとほる〈精霊流し〉の歌切れぎれに毀れかかつた耳にとどけり
  
  蝦夷地の息
(こ)相模の息共に帰らねば父はひとりで花火見てゐる
 

     
精霊流し、案山子、関白宣言となると、ボクの好きな さだまさし。 時々聴く。
      最近は息子たちなかなか帰つてこない・・・
    
      以下2首は選ばれなかったもの。


  沙汰なきは息災ならむと思ひつつ〈案山子〉口ずさむ…コンドイツカへル

  われ未だ〈関白宣言〉には程遠しまたも写真に謝つてをり


 
 
posted by 素浪人Joe at 23:49| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々に詠ふ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「潮音」2010年10月号掲載分(その2)



  # 紫陽花の露

          
          P1050288.JPG


 徒事
(ただごと)をさらりからりと歌はむかわが男歌失せて一年(ひととせ)

 生くるとは如何なることか解せぬまま紫陽花に置く露にふれをり

 連休の三日を外に出でざりしことを言はむと友訪ね行く

 今日のことはこれで終りと確かめてリクライニング平らに倒す

 メモリアルグリンと言へる公苑に陽はあふれゐて二回目の盆


   3日間孤独な日を過ごしましたよ、な〜んて。

   わざわざ友を訪ねて行つて話す事柄でもあるまい。
   で、帰ってきて、ああ疲れたなんて呟いて椅子のリクライニングを平らに倒してうたた寢。

   遅れ遅れで、2ヶ月分を出してたらカテゴリーの題名「日日に詠ふ」は合ってないなぁ。


タグ:紫陽花 男歌
posted by 素浪人Joe at 15:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々に詠ふ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

「潮音」2010年10月号掲載分(その1)


# 山 鳩

    画像 180.jpg   この牡丹を下さった友人も昨年亡くなった。
                         ずぼらなボクはろくに手入れもしないけれども、
                         この牡丹今年も健気に咲いてくれた。   

わが嘆きかくも深きと呟けばホホウサウカイと山鳩の声 ※

生命すべてよみがへりくる季
(とき)にして亡友(とも)より給びし牡丹また咲く

楊貴妃の左の眉の月昇るあはれいのちの消ゆる朝
(あした)

掌に重き懐中時計の秒針はしづかに巡る過去を捨てつつ

泣き言をほろほろと言ふ癖つきぬ大方は妻の遺影に向けて

  
春から夏にかけて落ち込みが激しく2ヶ月欠詠してしまった。
  選者の先生からハッパをかけられ
  10〜11月号に各2か月分を掲載させて頂いた。

  
  12月号の「探照燈」欄で※山鳩の歌に野中美佐子さんから次のやうな批評をいただいた。

  《 身の内に深い哀しみを抱く作者は、愚痴を人には吐かず野に放つ。

   「ホホウサウカイ」の山鳩の声はまるで母親のように悲しみを癒してくれる。
   叙情的で深い歌 》

  嬉しくありがたいけれども、《深い》と言はれると、なんだかくすぐったい思ひ…

posted by 素浪人Joe at 14:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々に詠ふ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月13日

「潮音」2010年7月号掲載分


  #わすれな草

    
PHOT0000000000065D20_s90[1].jpg  妻が他界してから買つてきた勿忘草が咲いて散って、
                        今年は、こぼれ種から庭のあちこちに増えた。
                        でも、そればかりではなく、
                                                      メヒシバとかセイタカアワダチソウらしい草まで生えてくる。
                        それらを見分けながら草取りもした。  暑かったなぁ〜



 うた詠めぬ暑き日中を蹲
(つくば)ひて醜(しこ)の荒草ひた抜きゐたり

 ひと日ごと気力失せ行く寒き春こころに鞭を打ち続け生く

 呑み過ぎはいけませぬとの声聴きぬグラスを前に真夜の空耳

 再びを逢へることなどあるまじと思へどもなほ願ひゐる来世

 こぼれ種子生ひて増えゆく花碧し忘る勿かれと風なきに揺る


 
以下二首は選ばれなかった作品


この春の寒暑こもごも吾が内の躁鬱に似て可笑しくもあり

気落ちして隠り居多き雨の日日まろき雫の軒より落つる

 
posted by 素浪人Joe at 23:44| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々に詠ふ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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