2008年09月14日

☆2008年度 題詠100首のまとめ(その2)

題詠51首目から終りまでです。一部推敲したものがあります。

【051: 熊】
   母思ふ熊野(ゆや)の舞こそあはれなれ花に混りて雨の降りくる
【052: 考】
   給はりし脆き脳(なづき)に考ふることのあさまし嗤ふな神よ
【053:キヨスク】
  「おはやうございます」の声に手を挙げてのど飴を購(か)ふキヨスクの朝 (改稿版)
【054:笛】
   背を伸ばし山車の上に立つ乙女子の笛の音冴ゆるふるさとの夏
【055:乾燥】
    憂きことの溜り潤びしわが魂を乾燥機にかけ回したき夜 (改稿版)
【056: 悩】
   ここへきて悩むことなし守護天使なでてくるるよわが禿げ頭
【057:パジャマ】
    絹やはきパジャマに手触れ思ひ出づ地震(なゐ)襲ひたる四川の街を
【058: 帽】
    戦闘帽かぶりてゐたり夏休み暑きその日の少年のわれ (敗戦の日)
【059:ごはん】
    炊きたてのかやくごはんのやさしさは例へば母の頬っぺへのキス
【060: 郎】 
    幸四郎の弁慶かなし関越えてうつつにあらぬ海鳴りを聞く (『勧進帳』)
【061: @】
     @マーク見るたびきみの瞳(め)を欲りぬメール届かぬこの夏の日々
【062: 浅】
    山腹に雲をまとひて浅間嶺は餅菓子のごとつぶれてをりぬ
【063:スリッパ】
     片方のスリッパだけが寝てゐたり引越し後の六畳一間
【064:可憐】 
     ぶつぶつと口とがらせて独りごつさまも可憐なきみにしありけり
【065: 眩】
    またたきを幾度すれども眩しさの消ぬひとありて今日も遇ひにき
【066:ひとりごと】
   「ひとりごとではないのよ」と照れつつも相聞の歌きみは呟く
【067: 葱】
    やはらかな葱の酢味噌が好きといふをみなの指の細く白かり
【068: 踊】  
    靄のなか踊りの列が消えてゆく風の盆終ふる夜明けの坂に
【069:呼吸】
   生きることと呼吸(いき)することの差をわれに教へて癌に死にし人はも
【070: 籍】
   無籍者にあこがれゐたる日もありき生意気盛りの流離(るり)の幻想
【071:メール】
   直ぐそばにゐる気配して見回しぬメール画面は笑みの顔文字
【072:緑】
   淡口の汁(つゆ)を蓋へるさ緑の小葱香れり博多饂飩(うんどん)
【073: 寄】
   わが内にわれとふ蟲が寄生して真夜に意識を齧り苛む    
【074:銀行】
    オレオレと言はれて送る銀行の口座名義の見知らぬ息子
【075: 量】
   わが脳(なづき)切売り 安売り 量り売り 賞味期限がくれば捨て値に

【076:ジャンプ】
   見上ぐればジャンプ台高し夏草のいきれの中に眩暈覚えて 
【077: 横】
    横たはる屍は誰(た)ぞとよくみればわが身ならずやかなしき「らくだ」
【078:合図】
    流し目を合図といふも味気なし胸の琴糸ピピとも鳴らず  
【079: 児】
     いつまでも未熟児といはれ年経りぬ こころの容器破れ果つれど
【080:Lサイズ】
   腹囲のみLサイズなるわが体 心のサイズSSにして
【081: 嵐】
     やとばかり山嵐とふ大技をかけて目覚めぬ五輪見し夜半
【082: 研】
     鍛へぬき研ぎすましたるししむらの投げ跳び走る夏の祭典
【083:名古屋】
    まいっぺん誘致運動やるみゃぁか名古屋五輪は居酒屋で開く 
【084: 球】
    さまざまの球飛び交ひて人々の魂熱かりし八月の空
【085:うがい】
   コロコロロカラカラコロとうがひする こはソプラノの音域ならむ 
【086: 恵】
    いくさなき世を恵まれてこのいのち七十余年咲けど徒花
【087:天使】
    堕天使をふと憧るることありき雷雲割れてなだれ落ちし日   
【088: 錯】
   倒錯の愛にも似たる思ひあり珍陀(ちんだ)の酒の揺るるギヤマン
【089: 減】
    いい加減にしろと叱られあきらめぬ100キロマラソン完走の夢 
【090:メダル】
   金メダルさほどに美味きものなるや表彰台にかぢる若人
【091: 渇】
    荒れ狂ふ雨に打たれて帰りきぬこころの渇き癒えずさぶしも
【092:生い立ち】
   移り住むこと幾度ぞ少年の積木崩るるごとき生ひ立ち
【093: 周】
    周遊券もてばこれの世あれの世とめぐりてゆかむその次の世も
【094:沈黙】
    観覧車まはれど人は還りこず思ひはとほし暝き沈黙
【095:しっぽ】
   雲去りて月にしっぽの生える夜は兎と狸酒を酌みゐる
【096: 複】
    虎皮の犢鼻褌(たふさぎ)怖き鬼やんま複眼ぎょろと獲物狙へり
【097: 訴】
    山羊の目は何訴ふるや銃を持つ人に擦り寄る戦なき日は
【098:地下】
    マンホールの蓋吹きあげて水襲ふゲリラに似たる地下の不意打ち
【099: 勇】
     いい仕事したかと思へば勇み足その不細工な足を愛(いと)しむ
【100:おやすみ】
    終(つひ)の日の眠りの時もおやすみと言ひて別れむまた逢はむため

                             以上にて9月1日完走しました。

ラベル:題詠100首
posted by 素浪人Joe at 12:58| Comment(3) | TrackBack(0) | 題詠100首2008 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
完走おつかれさまでした。

御多忙のなかで詠草、とりどりに味わいがありますね。

堕天使をふと憧るることありき雷雲割れてなだれ落ちし日

観覧車まはれど人は還りこず思ひはとほし暝き沈黙

荒れ狂ふ雨に打たれて帰りきぬこころの渇き癒えずさぶしも

 ……

 Joeさんのおだやかな雰囲気のむこうがわからたちのぼる激しさ、詩ごころを感じました。

 観覧車のお歌は「第三の男」みたいです。

 わたしの好きな映像シーンがいくつも浮かびました。
Posted by 雪香 at 2008年09月22日 17:27
Joeさん

百首ものお歌作られて、その創作意欲に感心しております。
ご立派ですね。
好奇心・・・歌心もあらゆる方面に向けられて・・・。


Joeさんの優しい心が伝わってきますね。
「やさしさ」が実はこの世で一番強いものだ・・・と近頃分かりました。

どうぞ御元気で。
Posted by トコおばさん at 2008年10月09日 09:59
みなさん、大変ご無沙汰してしまひました。
ボクもカミサンも少し体調を崩し、
二人で半人前の生活をしてゐました。

>雪香さん
ありがたうございました。
挙げていただいた3首共に自分でも好きな作品です。
100首を急いだので、少し練が足りないと思ひます。いやいや、自分の心の把握に甘えがあるやうにも思ひます… 反省(-.-)

>トコおばさん
ありがたうございます。
トコおばさんのやうにマメに更新ができず、
恥かしいです。
心身ともに少し落ち込んでをりました…

Posted by Joe at 2008年10月27日 02:00
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